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「ハイスコアガール」事件は何が問題だったのか?

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 今回は、漫画「ハイスコアガール」が他社のゲーム作品のキャラクターを無断使用し、著作権を侵害したとして、平成26年(2014年)11月に作者やスクウェア・エニックス社員ら16人が書類送検された事件について取り上げたいと思います。

 スクウェア・エニックス社は「ハイスコアガール」の中で、ゲームソフト販売・開発会社SNKプレイモア社が著作権を持つ対戦型格闘ゲームのキャラクターを100箇所以上許諾なしに勝手に使用してしまったようです。単行本の巻末に、著作権表示に使われる(C)マークとSNKプレイモア社の名前が記載されていましたが、アニメ化にあたり映像制作会社がSNKプレイモア社にキャラクターの使用許諾について問い合わせたところ、許諾を得ていないことが発覚しました。その後も両者の溝は埋まらず、平成26年(2014年)5月にSNKプレイモア社が告訴しました。作品は現在連載を休止しており、単行本も自主回収されています。
 これに対して、スクウェア・エニックス社は、「引用にあたるため、著作権を侵害していない」と反論しています。

 では、著作権法で認められる「引用」とは何でしょうか?
 著作権法では、一定の場合に他人の著作物を自分の著作物の中に引用することを認めています(著作権法32条)。引用に該当する例としては、自分の論文の中で他人の意見を批判して自説を展開する際に、他人の文章の一部をそのまま自分の論文に持ってくるような場合があります。

 引用による利用として認められるためには、以下の要件を満たさなければなりません。
(1)公表された著作物であること
(2)引用であること
(3)公正な慣行に合致すること
(4)報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であること
 特に(2)に該当するかについては、自分の創作にかかる引用部分と他人の創作にかかる引用された部分が明確に区別できること(明瞭区別性)、引用部分が主であって引用された部分が従であること(主従関係性)、によって判断されます。

 「ハイスコアガール」においては、登場人物たちが実際に発売されたゲームをプレイすることを通じて触れあっていく内容となっているそうです。ゲームのキャラクターやプレイ画面の描写の方が主であると判断された場合には、引用であるという(2)の要件を満たさないと判断されるでしょう。
 また、仮に引用であると認められたとしても、次に(3)や(4)を満たしているかが問題となります。(4)については、引用された部分の質的・量的割合が作品全体のどの位を占めるか等の諸事情を考慮して判断されることになります。

 告訴後の平成26年(2014年)10月、スクウェア・エニックス社は著作権の侵害がないことの確認を求めて、SNKプレイモア社に対して民事訴訟を提起しています。
 この事件は大きな反響を呼んでおり、知的財産法の研究者や実務家が平成26年(2014年)12月27日に著作権侵害の成否が明らかでない事案について刑事手続が進められることに反対するといった声明を発表しています。今回のように侵害が明らかではない事案で刑事手続を進めることは、今後の表現活動に重大な萎縮効果をもたらすものであり、憲法の保障する表現の自由に抵触するものである、というのがその理由です。

 この事件がどのような結論となるか、今後の動向が注目されるところです。

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