ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

きゃりーぱみゅぱみゅだけじゃない!ミラノ万博で日本文化を紹介するGENとは

DATE:
  • ガジェット通信を≫

齋藤由佳子氏とスローフード創立者カルロ・ペトリー二氏

7月11日にミラノ万博の日本館では、日本を特集する「ジャパンデー」が行われました。世界中で人気を集めている日本食を味わうために、毎日日本館を訪れる人もいるほど。クールジャパンの魅力を感じて、ミラノ万博に足を運んだお客も少なくなかったと思います。ジャパンデーには様々なイベントが行われ、なかでもきゃりーぱみゅぱみゅのライブが特に注目を浴びたとか。

2015年ミラノ万博のテーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」であり、食を通して世界の国々の文化が紹介されています。そのなかで和食文化を発信しているのは日本館だけではありません。GEN社(Genuine Education Network社)は、イタリア食科学大学と提携してミラノ万博内のスローフード館にて、日本の食文化に関する講義を行っています。今回はGEN代表取締役社長の齋藤由佳子氏に話を伺いました。

リクルートから食教育の道へ

—まずGENについて教えてください。

「GEN」とは「Genuine Education Network」の省略で、2014年に起業したイタリア政府認定スタートアップ企業です。GEN社はスローフードの哲学をベースとし、大学機関や地域、そして食の生産現場をネットワークすることで「食のほんもの」を学べる世界的な教育プラットフォームの構築を目指しています。世界の子供たち、そして専門家育成に食文化と味覚の教育を行い、Genuine(ほんもの)な食とは何か、異なる食や文化を学び合うことの大切さを教えています。GENの社名は日本語の「源」にも由来しており、食の源を守り、地球環境と人間の生活をよりよくすることの大切さを食の教育を通じての実現を目指しています。
現在ミラノ市内のドゥオーモ広場、ミラノ万博内のスローフード館、またスローフード創立者カルロ・ペトリー二を総学長とするイタリア食科学大学など、5カ所でGenuine Japan Lecturesという授業を毎月2〜3回開催しています。講義を行うのはGEN社が招致する日本人の専門家と弊社が認定する外国人の「和食文化講師」です。

—齋藤さんは「GEN」を立ち上げるまで、どのような道を歩んできましたか?

私はもともと日本では「リクルート」という会社に勤めてIT関係の仕事をしていましたが、同時に自分のビジネスを始めて、ワインディストリビュータの仕事をしていました。お客さんはほとんど東京に住んでいるexpat(※)でしたが、2011年の震災で、たくさんのお客さんが帰国してしまいました。それをきっかけに、もっと味覚や食について勉強したいと思い、二人の子供を連れてイギリスに渡り、ワインの勉強をしました。そこからハンガリーに行き、イタリアに移動して、2012年にピエモンテ州にあるイタリア食科学大学に入学したんです。日本を去ってから大学院を卒業した2014年までずっと「どうやって『食』と『教育』を自分の仕事にできるか」と考えていました。そしてやっと去年会社を立ち上げて、今は新しい食の教育プログラムを作っています。

(※)「Expat」とは「expatriate」の省略で、「自分の国に住んでいない人」をいう。「Foreigner」(外国人)より肯定的なイメージがあり、日本に住んでいる外国人も自分のことを「expat」と言う人が多い。

—イタリア食科学大学はどんな大学ですか?

イタリア食科学大学は2004年に創立されました。スローフード創立者カルロ・ペトリー二氏が総学長であり、スローフードの哲学がベースとなっています。50カ国から500人程度の生徒が集まっていて、年齢もバックグランドもばらばらです。たとえば、私のクラスは一番若い生徒が学部を卒業したばかりの22歳の人で、一番年上の人はリタイヤした60歳のアメリカ人の医者でした。また、私もそうでしたが、子供を授業に連れていく人もいるし、いろんな意味で多様性を体験できる場所です。食の総合大学として、社会学、化学分析、物理学、人類学など、様々な角度から食を学べる独特な大学・大学院です。

「地球に食料を」—ミラノ万博の矛盾とGEN

—GENはミラノ万博ではどのような活動をしていますか?

GENは和食だけではありませんが、ミラノ万博で日本の食文化を発信する活動をしています。その中で私たちは「発酵」というテーマを選び、様々な国の発酵食文化と比較しながらプログラムを作っています。つまり、よその国の「変わった食文化」を紹介するだけではなく、自分の食文化と比較しながら共通点・相違点のおもしろさを理解してもらえるようなプログラムを目指しています。現在スローフード館では日本でほんものの和食文化を学んでもらった教員による講義を行っています。また、7月19日までミラノにある「子ども美術館 MUBA – Museo dei Bambini」(MUBA) で日本のお弁当をテーマにしたワークショップ「Fantasia nel Bento」(お弁当にファンタジーをつめて) を開催しています。

—ミラノ万博のテーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」ですよね。そんな中、日本は食糧廃棄量が世界一だと言われています。それに対してGENは何をしていますか?

本来日本は余すことなく食材を使う食文化がある国。だからこそ保存食の技術がすごく発展して、発酵食文化ももったいないの精神から生まれたと思います。現在の食品廃棄量率が高いという問題の原因は、時間に追われている現代のライフスタイルにも原因があると思います。加工食品は手軽で便利だけれど単価が高く、賞味期限も短くなりますので、当然廃棄も多くなる。原材料を買って家庭で保存食を作り・加工や調理する方が合理的。
「もったいない」という意識も含め、食文化の教育という形で我々日本人がもう一度、保存や加工の歴史、技術について学ばないといけません。そうすることによって今の食糧廃棄問題を解決する新しい世代を作るのもGENのチャレンジだと思います。

—テーマとして地球の食料・エネルギーを選んだミラノ万博ですが、マックドナルドやコカコーラのような会社がスポンサーとなっていることに対してイタリアではたくさんの抗議や批難がありました。スローフードの哲学に基づいてGENを立ち上げた齋藤さんはその矛盾についてどう思いますか?

ミラノ万博の中でGENはメインストリームではありません。残念ながら、今万博でスローフードと違う部分がメインストリームとなっています。先ほど話したように、ミラノ万博のテーマは「Feeding the planet」(地球に食料を)であり、これから世界の食料問題をどのように解決していくかという話なのに、実際には万博に出展している多くは大手企業。これからの世界の食糧問題の主役である小規模で高品質な地域を担う生産者は注目されていません。
それに対してスローフードがアクションを起こします。10月3日から6日まで「Terra Madre Giovani」という大きなイベントを開催し、そこに2000人の小規模な生産者を招き、専門家による授業を行います。

—最後にTRiPORTの読者に何か届けたい言葉はありますか?

今の時代は人だけではなく、食べ物も旅していると思います。日本でもおいしいフランスチーズを食べれますし、おいしいイタリアンワインを飲めます。しかし、そのチーズ、ワインが作られている地域に行って、現地の人たちと一緒に食べて飲まないとわかち合えない価値がたくさんあるんです。GENは食文化を学ばせていただくために様々な地域に行って現地で作られたものを食べるというプログラムを提供しています。皆さんも今後、旅をすることで食の本当の価値をもっと楽しんでいただきたいと思います。

[齋藤由佳子:1976年 東京都渋谷区生まれ。英国の美術大学にて写真学部を卒業後、2000年(株)リクルート入社。インターネットの新規事業戦略に携わる。2009年ワインのコンシェルジュサービス会社を起業し、2010年リクルート退社。2011年より渡欧。2012年イタリアへ移住。2014年食科学大学大学院を修了。「Genuine Education Network(GEN)」を設立。2015年 ミラノ万博にて日本館認定食文化講義’Genuine Japan’やミラノ市子供美術館のワークショップを主催。
GENの公式サイトはこちら。]

(取材&文:Letizia Guarini)
(写真提供:齋藤由佳子・GEN

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
Compathyマガジンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP