読んだかどうかも「回答できない」…ヘイトスピーチ意見書をめぐる法務省の謎対応
「意見書の行方」シリーズ、今度はヘイトスピーチ意見書の行方について調べてみた
実は誰が読んでるのかもわからず、どこに行ったのかもわからない……そんな「意見書の行方」を追うシリーズ。
好評をいただいており、前回執筆した「【安保法制意見書はどこに?】きいただけで官邸激怒! 実は総理も官僚も意見書を読んでいないのか?」(http://gikainews.jp/120)については、中央官庁幹部からも「このニュース最高!」という賛辞を頂いた。
さて今回は以下の意見書の行方について調査してみた。
自治体名 : 東京都
内容 : 外国人の人権が十分尊重されることを求める意見書
http://www.gikai.metro.tokyo.jp/opinion/2015/2-01.html
日にち : 2015年6月24日可決。(その日のうちに郵送)
提出先 : 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、法務大臣
このような、ヘイトスピーチに関する意見書は、昨年から盛んに出されているらしい。(http://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section3/2014/12/201412.html [リンク])
下手したら暴行騒ぎになり、過激化する昨今のヘイトスピーチ……この件の意見書については、国での検討が何かしらされているだろうと期待しつつ、所轄官庁だろうと思われる法務省に電話してみた。
そのやり取りがこちらである。
地方議会ニュースが法務省に電話してみた
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記者 :
突然のご連絡失礼致します。地方議会ニュース編集部と申します。
先月6月2424日に可決され、その日のうちに法務大臣宛に郵送されたという「外国人の人権が十分尊重されることを求める意見書」の行方について調査しているのですが、実際法務大臣がお読みになったのか? また、現在どのような処理のされ方をしているのか、お聞きしたく思っているのですが、担当部署にお繋ぎ頂くことできますでしょうか?
法務省大代表 : 法曹記者クラブに所属している方ですか?
記者 : いえ、違います。
法務省大代表 : 分かりました。では秘書課広報室にお繋ぎします。
これまで意見書の件で、いくつかの官庁の大代表に電話しているが、今回は、記者クラブに所属しているかを聞かれた。記者クラブ所属だと何か対応が違うのだろうか? 謎である。
一般的なことしかお答えできません。(法務省担当者の解答)
その後、秘書課広報室に繋がれた後、人権擁護局総務課に繋がれ、結局行き着いたのが、法務省人権啓発課だった。
「どういうメディアですか? 新聞ですか?」といった地方議会ニュースについての確認をされ、「余り聞かれない質問なので…」ということで、一旦電話を切り、折り返し電話をいただくことになった。
20分位待った後、法務省人権啓発課の担当者から電話を頂いた。今回の質問に関する解答をまとめると、以下のような感じであった。
・一般的なことしか返答できない。
・一般的には法務省宛に来た意見書は関係部署に配布され、関係部署の中で実質対応される。
・法務大臣が読んだかどうかもお答えしかねる。
ということで非常につれない回答だった。
「一般的なことしか返答できない」というのはどういう意味なのだろうか。仮に上記の回答が「一般的」なら、少なくとも法務省内では「大臣が読むわけ無いでしょ。せいぜい担当部局止まりだよ」というのが「一般的」な認識である、という意味になるのだが…。
そもそも地方議会の意見書というのは、地方自治のプロセスを通して示されたその地域の「民意」のはずだ。
だからこそ意見書には、「意思決定を行う立場の人に読んでほしい」という意味で大臣の名前が書いてあるのだが、法務省としては何か他の申請書類と同じように「形式上は大臣が宛先になっているけど、複雑な対応は必要ないから実際は現場レベルで処理していますよ」くらいの感覚なのかもしれない。
どの省庁に電話しても、こうした「温度差」はしばしば垣間見えたが、法務省は特にそれが大きいように感じた。
大手マスコミだったら、情報提供してくれるのか?
また今回、法務省に電話してみて、「あなたの素性は?」と問われ続けていたように感じた。
大代表では、記者クラブ所属かどうかを聞かれ、その他の部署に回された際にも「どういう媒体ですか?新聞ですか?」といったことを確認された。
テレビ局であったり、新聞社であったり、いわゆる“ちゃんとした日本の伝統あるマスメディア”だったら、上記のような“つれない解答”ではなく、何かもう少し具体的な情報提供をしてくれたのであろうか?
以前も官邸に電話した際にぞんざいに扱われた(クレーム処理窓口送りにされた上に担当者から怒られた)ことがあったが、今回法務省とのやり取りによって、やはり大手マスコミではないこと(記者クラブに所属していないこと)が、大きな障害になることは確認できた。
大きな壁を感じつつ、これまでで唯一行方を追うことが出来た大宜味村議会の意見書(http://gikainews.jp/125 [リンク])の「その後」について、改めて報告するつもりだ。
(地方議会ニュース編集部)
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