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江守徹 俳優にとって大事なのは何度も台本読み理解すること

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 デビューから現在も文学座に所属する俳優の江守徹だが、時代劇での活躍も数多い。江守が語る時代劇での所作や勧善懲悪を単純なドラマに陥らせないために工夫を重ねた経験を語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

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 江守徹は1973年の『国盗り物語』、1974年『勝海舟』とNHK大河ドラマに立て続けに出演した後、「忠臣蔵」を題材にした1975年の『元禄太平記』では大石内蔵助役に起用されることになった。

「三年目に内蔵助が来たんですよね。役が段々とよくなって、最後についに主役が来たなと思いました。プレッシャーというよりは『よし、やってやるぞ』という気持ちが強かったですね。

 内蔵助というと映画だと中年のイメージがあるので『えっ、なんで俺が?』と思ったんですが、台本を読んだら最初に江戸に来た若い時代から始まってるんです。それで『これならできる』という感じがしました。

 我慢して自分の本心を隠して本懐を遂げるという、日本で一番人気のある話で、それを一年間かけてやることは自分でも楽しみでした。せっかく大役をもらったんだから、これに賭けるという気持ちで。

 時代劇の鬘(かつら)で嫌なのは、後ろ髪だったんです。そこを何とかしたいと思って、自分の毛を長く伸ばして、後ろも自分の毛を使ったんですよ。僕は襟足がちょうど逆髪になっているから、上に持ち上げるのにちょうどいいと思ってね。結髪の人は毎回大変だったでしょうけど」

 1976年にはテレビシリーズ『隠し目付参上』(TBS)に主演、三船敏郎と共演している。

「三船さんはいつも黙っている人でしたね。俳優は撮影の合間に待たされることが多いんですが、その時もずっと腰掛けてジッと考えていました。

 三船さんの殺陣は上手かったですね。ただ、殺陣というのも特別に難しいことではないんです。相手がこう来たらこう斬るという段取りさえ覚えていればできるんだから。その役になろうと思って刀を持てば、誰でもできることだよ。

 僕は若い頃から自分の生活の中に着物があったから、時代劇の所作とかには特に苦労しませんでした。自然にやればいいんですよ。お茶を飲むにしたって、特別な決まりがあるわけじゃないし、人間の生活なんだから。やりすぎはよくない。刀を腰にさせば、自然とそういう動きになるものです。

 だけど、腰の構えがあるかないかということは大事ですね。刀を構えても、腰が落ちないと刀は振れないから。

 ただ、テレビの時代劇の場合は捕まえる方にはドラマがないんですよね。結局は悪い者を捕まえたり斬ったりするだけの話だから、やりがいはないから演じていても面白くない。

 そういう時は、とにかく台本を読み込むしかない。何かが見つかるんじゃなくて、何としてでも見つけるんですよ。

 俳優にとって大事なのは、台本を何度も読んで理解することです。そうやって、この作品の中で自分はどういうことが要求されているのかを感じないと。

 ですから、その人間を理解するというか、感情が自分のものになるかどうかということが役の成否にかかわってくると思います。俳優の魅力は自分の人生以外にほかの人間になるということだからね」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

※週刊ポスト2015年7月17・24日号


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