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マンション管理から「コミュニティ形成」の項目が外される?

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マンション管理から「コミュニティ形成」の項目が外される?

前回「マンションの管理で、今起こっている問題点とは?」で紹介したが、マンション管理ではさまざまな問題がおきている。今回は、国土交通省が発表した「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」の報告書内でふれられている、「コミュニティ形成」項目の削除について、考えてみたい。
マンション管理のとらえ方が、国土交通省は「労働と対価」で総務省は「ボランティア」?

約3年、全11回にわたり開催されていた、国土交通省の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長・福井秀夫政策研究大学院大学教授)が今年3月に報告書を発表した。そこでの改正の1つは、前回取りあげたマンション管理組合の役員に、区分所有者以外の外部の専門家が就任する「第三者管理」を導入するかどうかというものであるが、今回、一番問題になっているのは、マンション管理組合の「コミュニティ形成」(コミュニティ条項)という言葉を新たな標準管理規約案から削除することだ。
今まで、「住むこと」に関するさまざまなコミュニティ形成を担ってきた管理組合から、その役割が取り払われ、純粋に建物というハード部分だけの管理が役目ということになる。

ところが5月12日、総務省が「都市部をはじめとしたコミュニティの発展に向けて取り組むべき事項について」を通知した。内容はマンション管理組合が行う地域コミュニティ活動を評価、地方自治体(地方公共団体)にその活動を支援するように、指示を出している。

なぜ、そんな矛盾するようなことが起こったか。筆者が考えるに、国土交通省はマンション管理を「労働と対価」としてとらえ、総務省は「ボランティア」としてとらえているのではないだろうか。また国土交通省は「管理」はハードの維持に特化すべきで、コミュニティは「管理」から切り離して運用すべきと考えているようだ。管理費用で出してもよい活動について、より具体的な定義が必要

検討会において、「コミュニティ形成」の項目を削除したいと考えている理由としては、「コミュニティ形成」の拡大解釈から管理費用の使い方において誤解があるからだという。現行の標準管理規約では「管理費を『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用』にも充てることが可能である」とされている。このため、「任意参加である自治会費を管理費から出しているケース」や「コミュニティ形成を拡大解釈して管理費から飲み会代などを出していた」などが問題になっている。

あくまで筆者の見解だが、総会や防災訓練など本来全員が参加すべき会合で必要な費用や自治会費などは管理費から支払われるべきではないだろうか。出席したかどうかで費用が別となれば参加する意欲や機会も少なくなる。むしろ「出席しないと損だ」と感じてもらった方がいいのではないか。

よく例えられる「1階の住人はエレベーターを使用しないので、エレベーターの点検費を払わなくてもいいのではないか」という理屈が適合しないのと同様だ。マンションという全体の共有財産を守るために必要な活動経費と考えるべきだろう。

もちろん一部の人の楽しみのための飲み会やクラブ活動などは別会計にする必要はあるだろう。いずれにしても、コミュニティ項目自体を外すのではなく、具体的な例を挙げて、指針を定義したほうが混乱がないのではないだろうか。「コミュニティ」という曖昧に見えるものが、実はマンション管理において存在価値が大きい

もともと「コミュニティ」というもの自体が、「法律」とか「条項」といったものとは、なじまない性格を持っている。法律的な立場で、白黒はっきりさせたい人たちにとっては、適合しないものと片付けられてしまったのではないだろうか。

筆者は仕事上、また自分自身の勉強のためにも、マンションの理事長への取材を続けているが、マンションの管理は、それぞれのマンションの置かれた事情により、管理方法もさまざまである。

老朽化したマンションをリノベーションし、付加価値を加えた例、あるいは管理費滞納を住民たちの努力によって清算させた例、理事長の仕事量に鑑みて報酬が支払われている例、マンションの共用部を法人化して活性化させている例等々。いずれも創意と工夫にあふれた管理方法を編み出していて、頭の下がる思いがする。

これまで取材した経験ではリタイア後の時間のある人たちの主導というイメージが強かった管理組合だが、最近では現役の世代による、積極的な管理方法へとバージョンアップしている例も見られる。マンションの管理を煩わしいものから、楽しいものへと変革している動きは頼もしい。さらにマンションを供給する側の企業も、近年は積極的に取り組んでいる。

筆者自身も「自宅マンションの建替え」という、時間と手間のかかるプロジェクトを建替え委員会のメンバーとして経験した。その際に一番大切だったのは「住民の協力・参加意識」だった。問題が起こるたびに、その問題に一番適した人が自ら対処した。

例えば近隣の教育施設への工事期間のご協力のお願いは、その学校の卒業生を持つ親がPTAの人脈を活かしてスムーズに対応。また日ごろから町内会と付き合いの長い方が、町内会のサポートを受けるべく対応してくれた。

マンションの理事長取材を通して痛感したのは、情報交換の必要性だ。「他のマンションの事例」を採り入れて、自分たちのマンションの管理に活かしたいという声を何度も聞いた。もし公共機関が本格的に「マンション管理」の問題に取り組むなら、上手く運営している管理組合に、まずその手法を聞き取り、公開することが大切なのではないだろうか。

確かに老朽化、高齢化などの問題を持つマンションでは、第三者の協力が必要になるだろう。けれども突然現れた第三者に住民が心を開くとは思えない。ましてや「マンション全体の管理の適切なあり方を大所高所から検討し執行する役割を担う者である」という一文に代表されるような考え方では、円滑には進まないだろう。

もちろん時には「法律」で解決するという場面はある。だが、住民の協力・参加意識を高める活動が、実はマンション管理には欠かせない側面があるということは忘れてはならない。

もともと区分所有法ではマンションごとに規約を定められるとしている。最終的には、そのマンションの個性に応じた管理方法やコミュニティの醸成方法があっていいのではないだろうか。建物や敷地の魅力だけではなく、「管理組合の活動が魅力」という理由で選ばれるマンションがあってもいいはずだ。そういった観点でマンションを選ぶ人々も徐々に増えてきていると筆者は感じている。●参考
・国土交通省:マンションの新たな管理ルールに関する検討会について
・総務省:「都市部におけるコミュニティの発展方策に関する研究会」・マンションの管理に住人以外を入れる「第三者管理方式」とは
マンション管理から「コミュニティ形成」の項目が外される?
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/07/14/93956/

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