任天堂・岩田聡社長の「仕事観」――自分のコピーがあと3人いればいいのに、なんて傲慢な考えだった

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任天堂・岩田聡社長の「仕事観」――自分のコピーがあと3人いればいいのに、なんて傲慢な考えだった

任天堂社長の岩田聡氏が7月11日、逝去した。ゲームプログラマーとして、ゲーム会社の経営者として世の中に数々のゲームを提供し、世界中の人たちを驚かせ、楽しませてきた。

岩田氏は対談やインタビューで魅力的な言葉を残しており、そこにはゲーム以外の仕事に携わるビジネスパーソンにも通じるメッセージが込められている。
糸井重里氏と語った「星空の下の仕事観。」

岩田氏は大学卒業後、アルバイトで働いていたHAL研究所に入社。32歳で、多額の負債を抱えた会社の社長となり、42歳で任天堂の社長に就任している。

HAL研究所時代から、部下との面談を重視していた。ほぼ日刊イトイ新聞にまとめられた糸井重里氏との対談「星空の下の仕事観。」(2008年4月11~21日掲載)には、他人と働くことの難しさと面白さが語られている。

「仕事はやっぱりたいへんだし、イヤなことはいっぱいありますよ。きっと、我慢もしなきゃいけません。ですけど、おそらく、その人にとって『仕事がおもしろいかどうか』というのは、『自分が何をたのしめるか』という枠の広さによってすごく左右されると思うんです」(第1回 はたらきたい。)

「いまよりずっと若いころ、30代前半くらいの自分がものすごく忙しく感じていたころに、『自分のコピーがあと3人いればいいのに』って思ったことがあるんです。でも、いま振り返ると、なんて傲慢で、なんて狭い視野の発想だったんだろうって思うんですよ。だって、人はひとりひとり違うから価値があるし、存在する意味があるのに、どうしてそんなこと考えちゃったのかなって恥ずかしく思うんですよ」(第4回 星空の下の仕事観。)

「どういうわけか、明らかに説教しやすい人と、しにくい人がいるんですよ。安心して『バカもん!』と言える人と、腫れ物に触るように叱らないといけない人がいるんですよね。で、これはねぇ、ものすごい差なんです。こちらから与えられる量も、その人が吸収できる量も、ものすごく変わってくるんですよ」(第5回 「バカモン!」と言える人。)

「明らかに自分と意見の違う人がいる。それは、理不尽にさえ思えるかもしれない。でも、その人にはその人の理屈と理由と事情と価値観があるはずなんです。(略)自分にはないものをその人が持っていて、自分にはできないことをやっているということに対して、敬意を持つこと。この敬意が持てるかどうかで、はたらくことに対するたのしさやおもしろみが、大きく変わってくるような気がするんです」(第7回 「ありがとう」に出会う)

「人は変わる」ことを理解しないリーダーの下で働きたくない

1994年に発売されたRPG「MOTHER 2」の製作をきっかけに、岩田氏と糸井氏は友情を深めた。「星空の下の仕事観。」以前に、糸井氏は「ほぼ日」の中で「社長に学べ!」という連載対談を行い、そのひとりとして岩田氏を招いていた(2005年3月1~22日)。

岩田氏は、「星空の下の仕事観。」で語ったコミュニケーションの問題とともに、プログラマーの仕事を培った問題解決スキルについても語っている。

「わたしは昔からここだけはわりと自信があるのですが『コミュニケーションがうまくいかないときに、絶対に人のせいにしない』ということに決めたんですよ、あるところから。『この人が自分のメッセージを理解したり共感したりしないのは、自分がベストな伝えかたをしていないからなんだ』と、いつからか思うようにしたんです。うまくいかないのならば、自分が変わらないといけない」(2 人のせいにしないと決めた。)

「事実を見たら、常になぜそうなるのかの仮説を立てるんです。仮説をたてては検証してみて……当然人間がやっていますからしょっちゅうまちがうんですけどね。でも仮説を立てては検証して、とくりかえしているうちに、やっぱり、より遠くが見えるようになったり、前には見られなかった角度でものが見られるようになったりするんです」(同8 いそがしい場所に身をおく。)

「人が変わっていくんだということを理解しないリーダーの下では、わたしははたらきたくないと思ったんです。自分が変わったらそれをちゃんとわかってくれるボスの下ではたらきたい……自分がどんな会社ではたらきたいかというと『ボスがちゃんと自分のことをわかってくれる会社』や『ボスが自分の幸せをちゃんと考えてくれる会社』であってほしいと思ったんですね」(同10 面談はこんなに大事なのか!)

「分析とはものごとを要素にわけて分解して、そのなかで『こうすればこれは説明がつくよね』という仮説を立てることですから、わたしだけでなくみんながやっていることなんです。だからプログラマーの特権ではないと思います。ただ、プログラマーはそれを毎日やっていますので、いくつも仮説を立てては頭のなかで比べる訓練はすごくしています」(同11 話をきいて、問題をほぐす)

社員の説明に爆笑「何というおバカな仕様!」

HAL研究所で行っていた部下との面談は、任天堂の社長に就任してからも続き、同社公式サイトの「社長が訊く」という名物コーナーになった。そこでは自社の社員に対して、腹を割った会話が繰り広げられている。

「あきれますねぇ。これは褒め言葉ですが、「何という『おバカ』な仕様!」としか言いようがないですね(笑)」(社長が訊く『街へいこうよ どうぶつの森』)

「私は、慢心を生んだり、溺れたりしたくないので自分たちに『成功』という表現を使わないように気をつけているんですけど、あえて言ってしまうと、タッチジェネレーションズというのはひとつの成功例だったと思うんですよ。(・・・)だからこそ、もう使わないって決めたほうがみんなが潔く取り組めるんですよね」(社長が訊く『ニンテンドー3DS』)

「そもそも、わたしたちはお客さんにウケたいと思って仕事をしているんですが、ウケるというのは、お店で何個売れるということじゃないんです。(略)買ってくださるのはどんなお客さんで、ひとつの製品を何人の人たちで共有して、どのように遊んでくださって、すぐにやめちゃったのか、それともずっと遊んでくれてるのか、そのことを人におすすめしたくなるくらい好きになったのか、『何だガッカリ』と思って終わってるのか、どっちも1個の売上げなんですけど、それを知るのと知らないのでは次のステップで考えることがぜんぜん違ってくるんですね」(社長が訊く『Wiiの間』)

他にも岩田氏の言葉には「誰か他の人が喜んでくれることが自分のエネルギーになる」という言葉がたびたび登場し、ネットで読むことができる。働くことの意味を考える人たちに、大きな刺激になるのではないだろうか。

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