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ABCマートを送検した労働Gメン ブラック企業の摘発は進むか

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“労働Gメン”の本領発揮といったところか――。7月2日、靴の販売チェーン「ABCマート」が、従業員に法定労働時間を大幅に超える月97~112時間もの残業をさせていたとして、同社の労務担当役員と店舗責任者らが労働基準法違反容疑で東京地検に書類送検された。

 ABCマートの過重労働実態を厳しく追及し、送検まで追い込んだのは、厚生労働省の管轄下にある東京労働局の「労働基準監督官」だ。

 同局は今年4月よりブラック企業対策強化のため、「過重労働撲滅特別対策班(通称、かとく)」を結成。選りすぐりの“スーパー取締官”による初の検挙となった。

 労働基準監督官はブラック企業の社会問題化や、2013年に女優の竹内結子主演で女性監督官を描いたテレビドラマ『ダンダリン』(日本テレビ系列)の放送などにより、その存在は徐々に知られるようになった。

「全国に約3000人いる監督官は、企業の長時間労働や賃金未払い、労災隠しなどあらゆる労働問題に関する法令違反を取り締まっている。

 海上保安官や麻薬取締官と同じ『司法警察官』としての権限を持っているため、指導や是正勧告に従わない企業には、立ち入りで強制捜査(臨検)をしたり、使用者の逮捕や送検までできる」(全国紙記者)

 ABCマートの一件も、監督官が度重なる指導や是正勧告をしたにもかかわらず、改善しなかったことから「最後の手段」に出たものと見られている。これだけブラック企業批判が高まるご時世にあって、杜撰な労働管理を行っていたABCマートに同情の余地はない。

 だが、東京労働局が社名を公表してここまで大きく扱った背景に、「さまざまな思惑があるのでは」と推察するのは、人事ジャーナリストの溝上憲文氏だ。

「政府が早期成立を目指している労働基準法の改正案は、長時間労働で従業員にコキを使う企業に対して指導・監督の強化を謡っています。厚労省も年3回是正勧告を行った企業の社名を否応なく公表する方針を掲げるなどブラック企業対策には力を入れています。

 特に、ABCマートのように全国各地でチェーン展開をし、店舗ごとに従業員の労働時間や賃金体系を管理させている場合、たとえば立場の弱いアルバイトにサービス残業をさせて売り上げの帳尻を合わせていても、実態が表に出にくいケースが多い。そのため、似たような小売業に対し、制裁効果を見せつける目的があったと思われます。

 しかし、うがった見方をすると、安倍政権の目指す裁量労働制をはじめとする労働時間の規制緩和は、かえって長時間労働を助長するとの批判を招いています。そうした声をかわすために監督強化をしているのではと見る向きもあります」

 重要なのは、ブラック企業の徹底排除を目指し、いかに持続的な取り締まり強化ができるかだろう。溝上氏はこんな懸念を口にする。

「かつて、監督官は夜遅くにビルの窓から明かりが漏れている企業をシラミつぶしに内偵して恐れられていましたが、最近は相談件数も膨大なうえに、大きな企業では立ち入りしても巧みに証拠隠滅を図るなど、少ない監督官ではとても手が回らない状況です」

 厚労省は監督官を増やすよう国に提言はしているものの、人件費の大幅アップにつながりかねず、思い切った増員政策は取られていない。

 労働組合やNPO、対策弁護団など“駆け込み寺”が増えたいま、なによりも労働者一人ひとりが変わりゆく労働法制を理解し、声を上げなければブラック企業の撲滅は果たせないだろう。


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