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18歳以上に選挙権、高校教育現場の混乱と課題

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改正公職選挙法により、18歳以上から選挙権が行使できるように

平成27年6月17日に成立した改正公職選挙法により、18歳以上から選挙権が行使できるようになりました。来年の夏に予定されている参議院選挙が、18歳に選挙権を与える最初の国政選挙となる見込みです。

これを受け、高校生でも18歳になれば選挙権が行使できることから、学校での選挙に関する教育のあり方について議論が巻き起こっています。自民党の文部科学部会は本年7月2日に学校教育のあり方をまとめた提言を了承し、月内にも政府に提言する方針であることが報じられています。提言では、選挙権年齢の引き下げに伴う「学校教育の混乱を防ぐ」ことを目的に、公立学校の教員の政治的行為の制限を強化し、違反には罰則を科す等の教育公務員特例法の改正が盛り込まれました。

法律で上から押さえつければ、現場が萎縮してしまう可能性も

しかし、既に教育公務員特例法で政治的行為の禁止が定められており、さらに罰則を設けて禁止する必要があるのかとの疑問があります。また、法律で上から押さえつければ現場が萎縮してしまい、学生に対して真に必要な教育もできなくなるのではないか、との批判も寄せられています。

確かに、教育現場において特定政党への投票を呼びかけるなど、直接的な政治的行為は当然、禁止されるべきです。しかし、私見では自民党の提言には多くの問題も含まれており、極めて問題のある提言だと考えられます。

「政治的行為」の内容が不明確

第一に、「政治的行為」の内容が不明確であるということです。例えば、憲法改正が選挙での争点となる場合、立憲主義といった現行憲法の規定や理念を話すことも、言いようによっては「政治的行為」となる可能性があります。政治的行為の判断が恣意的になされた場合、政治的行為の禁止を「政治的に」利用される可能性もあるのです。

第二に、罰則をもって対応することは行き過ぎた行為です。前述の禁止される「政治的行為」と、そうでない場合の線引きが曖昧であることと併せ、教育現場の萎縮を招く可能性があるからです。第三に、学生に対する有権者としての教育とも矛盾します。選挙権を行使する前提として多様な考えの存在を認め、その中から自らや国・地域の将来を託すにふさわしい代表者を選ぶのが選挙です。

指導・教育も一人前の大人に対するものでなければならない

今回の法改正は、18歳以上であれば、この点をきちんと判断できるとの考えから行われたものだと思われます。そうであれば、教師がどのような話をしても、生徒はきちんとその是非を判断できるはずでしょう。にもかかわらず、教育現場の混乱や生徒への不当な影響を理由に教育を規制することは、論理矛盾であるといわざるを得ません。

選挙権において18歳以上を一人前の大人と認めた以上、それに対する指導・教育も一人前の大人に対するものでなければなりません。有権者教育は、教育内容を管理・規制するのではなく、多様な意見をバランス良く提示し、自由に議論することを通じて個々の生徒が有権者として主体的に判断できるようにすることこそが必要ではないでしょうか。

(半田 望/弁護士)

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カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
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