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トヨタとサムスン 同じ世襲企業なのに明暗分かれた理由とは

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 日本と韓国を代表する企業といえば、トヨタとサムスンに違いない。2014年度営業利益が2兆7505億円を計上したトヨタ。他方のサムスンは、スマートフォンや半導体などの事業を展開し、資産総額は300兆ウォン超(約33兆円)。
 
 両社に共通するのは、創業者の一族が経営の根幹に関わるということだ。前近代的なスタイルとの批判が根強いが、ショートターミズム(近視眼主義)や意思決定の分散化を回避できる利点がある。だが、そんな両社も、ここにきて明暗が分かれている。ジャーナリストの岸建一氏がレポートする。

 * * *
 サムスングループの総帥、創業者の三男であるサムスン電子会長の李健熙(イ・コンヒ)氏は徹底したトップダウン方式で知られる。それを支えているのは人事での信賞必罰と成果主義だ。約40万人の従業員を抱えるサムスングループには「役員」と呼ばれる幹部が2000人ほどいる。

役員になれば、高額の報酬と高級車での送迎など好待遇が約束される。常務に昇進すれば給料は数割増になり、専務になれば倍増する。社員は成功物語を夢見るが、役員になれる「定年」は46歳程度。そこに達しない社員は「肩たたき」の対象となる。

 さらに役員になっても重圧から逃れられない。結果の出ない役員が突然、職場を去り、長期休養を命じられる必罰もあるからだ。健熙氏がしばしば口ずさむ言葉がある。

「私の人事方針は常に信賞必罰。よくやった人は抜てきし、そうでない人は抑え付ける」

 トヨタもグループ従業員は約34万人超。しかし、彼らを束ねるのは、サムスンとは逆の思想だ。それが、もの造りの現場から編み出された人材育成のメソッドだ。ミスが起こっても「人を責めずに仕組みを責める」という姿勢である。人を変えるのではなく、仕組みを”カイゼン”することで職場を向上させてきた。

 豊田章男社長の口癖はこうだ。

「現場はもっと自由にやっていい。その代わり、その責任はすべて俺がとる」

 結果や数字によって、トップの椅子が揺るぐことのない創業家社長ならではの言葉である。章男社長は就任以来、数値目標を口にしたことがない。代わりにこう語ってきた。

「もっと、いいクルマを作ろう」。いいクルマとは何か。社長は明言しないことで、あえて個々人に考えさせた。ここに章男社長の反省がある。

 7代目・達郎社長の退任以降、豊田家外のサラリーマン社長が3代にわたって続いた。この間、数値目標に縛られたトヨタは、拡大成長を続けていく一方、利益の見込める大衆車を作り続けた。実際、1990年代後半から2007年まで、トヨタは世界中で毎年のように工場を新設し、年50万台ペースで生産台数を増やしていった。

 だが、身の丈を超えた経営は、リーマンショックによる需要急減であえなく破綻。工場の稼働率は急落し、4000億円を超える営業赤字に転落した。盤石に見えた楼閣は、実はそこかしこに歪みを抱えていたことを章男社長は知る。

 側近はトップに都合のよいことしか伝えない。もの造りの魂を失った現場では、「無個性」な車しか作れない。章男社長は、一大改革を志す。それが、前述したように現場に権限を渡すことだった。サムスンの健熙氏が就任当時、「ショック療法」で社内改革を試みたのとは対照的である。

 その健熙氏だが、2014年5月、ソウル市内の自宅で倒れ、一時は心停止に陥った。その後、持ち直したものの、社長のカリスマ性と社員へのプレッシャーで急成長した企業は、その原動力が失われると急速に失速する。後継者とされるのが長男の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長だ。

 ソウル大を卒業後、慶応大と米ハーバード大で経営学を学んだエリートだが、既に、事業を失敗させた過去もある。厳しい信賞必罰の中で育ってきた社員から「なぜ、実力もないのにトップに立つのか」との疑問も生じている。

 後継争いによる組織の弱体化は、韓国企業が目下、抱える問題だ。経営破綻を招いた現代自動車や、最近ではロッテグループでの創業者子息間の確執といった事例を見ながら、サムスンはどう組織運営を立て直すのか。その時、目に入るのは、同じ世襲企業ながらサムスンと対極の経営を行うトヨタかもしれない。

※SAPIO2015年8月号


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