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若者が渋谷でデモ張る「憲法の季節」 門外漢に役立つ本紹介

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「違憲」「立憲主義」「言論の自由」……憲法の言葉が毎日のようにニュースで飛び交う。世は「憲法の季節」を迎えつつある。フリー・ライターの神田憲行氏が憲法がわかる本をお勧めする。

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 安保法制を巡る議論が国会を飛び出し、渋谷で大勢の若者がデモを張る事態になっている。また一部自民党議員らによる発言を巡り、「言論の自由」という言葉も毎日のニュースを賑わしている。日米安保を巡って激しく対立時代をかつて「政治の季節」と呼んだが、今や「憲法の季節」といっていいだろう。

 そこで憲法をより身近にわかりやすくするための本をいくつか紹介したい。法律の門外漢である私が仕事のため読んで参考になった本である。

1.「テレビが伝えない憲法の話」(PHP新書)

2.「憲法の想像力」(NHK生活新書)

 どちにも首都大学東京の准教授・木村草太氏による本である。木村氏は早くから集団的自衛権違憲論を唱えて憲法学界内で注目を集め、「報道ステーション」キャスターを務めるなどメディアを通じての発言も多い。

 私は木村氏に長時間インタビューをしたことがあり、その経験から木村氏の特徴は歯切れがよく、意外とユーモリストでわかりやすいことだと思っている。この2冊にもその特徴がよく現れている。どちらも9条について触れている。

3.「未完の憲法」(潮出版社)

 木村氏とリベラル派憲法学者の代表であった故・奥平康弘元東大名誉教授の対談集である。「未完」とはいまだ日本国憲法が目指す社会が実現されていないという意味で、「立憲主義」「表現の自由」などについて触れられている。

 自分の昔話をして恐縮だが、私も学生時代、奥平先生の論文を読んで、真のリベラル派の凜とした姿勢に大いに感銘を受けた。いまとなってはどの論文のどんな文脈で出てきたのか失念したが、「相手を黒く塗ってその黒さを非難してはいけない」という言葉が記憶に残っている。それは今でも、たとえばデモの光景のなかで安倍首相の顔にちょび髭をつけてヒトラーを模したような似顔を見るたびに、思い出されるのである。

4.「『無罪』を見抜く 裁判官・木谷明の生き方」(岩波書店)

 30件以上の無罪判決を確定させた元裁判官・木谷明氏へのインタビュー集。木谷氏は地裁判事のほか最高裁判所調査官も経験しており、最高裁判決がどういう過程で書かれるのか詳細に語っていて非常に興味深い。また昔の裁判官は給料がひどく安かったなど私生活にも触れられており、日経新聞の名物連載「私の履歴書」のような面白さがある。

 憲法絡みでは「憲法判例を作る」という章の他に、戦後の憲法学をリードした宮沢俊義の東大での授業が「漫談みたいで1時間半笑いっぱなしであとにはなんにも残らなかった」というエピソードが面白かった。

5.「日本国憲法」(小学館)

6.「世界憲法集」(岩波文庫)

「日本国憲法」は憲法の条文をわかりやすい語注と写真をつけて紹介した。1982年に発売され、今も90万部を越えるロング・ベストセラーになっている。ちなみに先述の木村氏も中学生時代にこの本に出会って法律家の道を志した。本を出すとはそういう「因縁」をもたらすのだという、出版界で飯を食っている人間にとっては励まされるエピソードを付け加えておく。

「世界憲法集」は、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、韓国、スイス、ロシア、中国、日本の憲法を解説とともに条文を掲載している。

 憲法は法律であると同時に、国際社会に対して「我々はこういう国である」という一種の声明文という性格も帯びている。戦前、国際連盟を脱退したわが国が、日本国憲法の前文で

《われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会で名誉ある地位を占めたいと思う》

 と決意を明らかにしたのはその例である。「世界憲法集」もその観点から眺めていくと興味深い。

 ドイツのメルケル首相が来日したときにドイツ憲法をぱらぱらと眺めて、同じ敗戦国からスタートした同国の憲法6条4項に、

《すべて母親は、共同体の保護と扶助を請求することができる》

 という条文を発見し、しみじみとした感に打たれた。


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