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北朝鮮 拉致調査進める利点なく中国との関係回復に方針転換

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 モンゴルのフレルバータル駐日大使は6月23日、記者会見を開いてこんな不思議な発言をした。

「秘書官たちはモンゴルに“行っていないことになっている”」

 北朝鮮による拉致問題解決に向けたモンゴルの協力が話題にのぼり、安倍晋三首相の懐刀である今井尚哉・首相秘書官らが5月中旬にモンゴルを極秘訪問していたのではないかと問われて、半ば公然と認める発言をしたのだ。

 官邸はモンゴルルートにすがって打開策を探し始めた。それは日朝協議が完全に北朝鮮ペースで進み、安倍官邸が金正恩に足元を見られていることを物語っている。

「約束の期限」が目前に迫った。北朝鮮は昨年7月4日、拉致被害者を含むすべての日本人を対象とした特別調査委員会を設置して、「1年を目処」に調査を終える意向を日本政府に伝えた。ところが北からは一度も報告がないまま、タイムリミットを迎えようとしている。

 1年前には「すべての拉致被害者を取り戻す」と声高に連呼していた安倍首相は、このところほとんど拉致問題に触れなくなった。被害者家族らからは安倍外交への不信感が日に日に高まっている。政府関係者はこう語る。

「5月14~16日、モンゴルに飛んだ今井氏は現地で北朝鮮関係者と拉致問題で話し合った。官邸はこれまで交渉を任せてきた外務省の伊原純一・アジア大洋州局長による公式ルートではこれ以上進展は望めないと判断し、飯島勲・内閣官房参与が持つ非公式ルートを利用したようだ。

 実際、今井氏のモンゴル訪問には飯島氏が同行している。しかし、拉致被害者の即時帰国に繋がるような成果は得られなかったようだ」

 安倍官邸による外交敗北を糊塗するため、安倍氏に近い官邸幹部は最近、周囲にこう話しているという。

「安倍首相が近くモンゴルを訪問し、横田めぐみさんの娘であるキム・ウンギョンさんと会う計画がある。被害者救出には繋がらないが、拉致問題の象徴であるめぐみさんの娘と首相が会えばパフォーマンスにはなる」

 昨年3月に首都ウランバートルで横田滋・早紀江夫妻とウンギョンさんが面会を果たすなど、モンゴルはこれまで何度も日朝秘密交渉の舞台になってきた。

 だが、日本の外交敗北はもはや隠しようがない。北朝鮮問題に詳しい関西大学教授の李英和氏が指摘する。

「いまの北朝鮮にとって、日本に配慮して拉致交渉を進めるメリットはない。再調査を約束した1年前は、北朝鮮は最大の支援国だった中国との関係悪化に加え、核・ミサイル開発放棄を迫るアメリカなど国際社会からのプレッシャーで八方塞がりの孤立状態にあった。そこで拉致再調査というエサをチラつかせて日本に接近し、包囲網に風穴を開けると同時に、あわよくば経済支援も得ようと目論んだ。

 ところが、1年経って状況が変わった。ロシアからエネルギーや食糧支援を引き出せるようになり、国の窮状を打開するにはやはり中国との関係回復しかないと考え直した。金正恩の頭にあるのは9月に中国で行なわれる『対日戦勝利70周年記念行事』にどうやって出席するか。実現すれば中朝関係の修復を意味します。日本はすでに眼中になく、拉致交渉が大きく進展することは考えにくい」

 拉致は国家権力による我が国の主権侵害である。これに正対し、問題解決に取り組まぬ政権が「国を守る新法を」と吠えても白々しい。

※週刊ポスト2015年7月10日号


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