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暴力団 税務上はPTAや町内会等の任意団体と同じ扱いになる

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 福岡県を本拠地とする指定暴力団・工藤會総裁の4度目の逮捕が“業界”を震撼させている。警察はブラックボックスだったヤクザのカネの流れを解明し、必要ならば課税し、疑わしき点があれば摘発することで、暴力団締めつけを一層強化しようとしている。警察・税務当局と暴力団のせめぎ合いの内幕をジャーナリストの伊藤博敏氏が緊急レポートする。

 * * *
 米映画『アンタッチャブル』(1987年公開)は、マフィアのボスであるアル・カポネをロバート・デ・ニーロが、対決する財務省捜査官をケヴィン・コスナーが演じた。禁酒法時代の退廃的なシカゴの雰囲気と両者の緊迫感あふれる攻防を、ブライアン・デ・パルマ監督が斬新な演出で描いて大ヒットした。

 戦いに勝利したのは国家権力側だ。アル・カポネは懲役11年の判決を受けて服役し、「闇社会の支配者」の座から滑り落ちる。

 その時の罪状が所得税法違反、つまり脱税だった。以降、脱税は米捜査当局のマフィア摘発の手段として機能してきた。

 一方、日本では「ヤクザのカネ」は長く放置されてきた。暴力団は税務上、PTAや町内会、大学のサークルといった任意団体と同じ扱いになる。暴力団資金を特定できても、組織の運営費(経費)に使われている限りは課税できなかった。

 だが、それは建て前だ。本音は単純で、税務署が暴力団を怖がったからである。捜査権も強制調査権もない税務署員が暴力団事務所に乗り込んで、「帳簿を見せろ」といえるわけがない。

 映画のタイトルである『アンタッチャブル』には、財務省捜査官がマフィアにとって「賄賂が通じないので触れられない人(アンタッチャブル)」という意味が込められていた。日本では真逆だ。暴力団こそ税務署にとって「怖くて触れられない人」なのだ。

 だが、その“慣行”が覆った。福岡県警は6月16日、指定暴力団「工藤會」の野村悟総裁(68)らを脱税(所得税法違反)容疑で逮捕した。野村総裁の逮捕は今回で4度目だ。今までは組織的殺人未遂など凶悪犯罪の容疑だったのに、今回は暴力団マネーにメスを入れた。

 その衝撃は“ヤクザ業界”全体に広がっている。いままで全国の暴力団にとって、工藤會捜査は「対岸の火事」だった。凶悪犯罪が福岡で多発し、工藤會は日本で唯一、暴力的な要求行為などがあれば「中止命令」なしに即時の組員逮捕が可能な「特定危険指定暴力団」に指定されている。一般市民に牙を剥かず、暴力団同士の抗争も避ける平和外交路線を浸透させてきた山口組など他の組織からすれば異質な存在である。

 ところが、野村総裁の脱税摘発は、「上納金」という配下の組織から吸い上げたカネを「個人の収益」と見なして立件した。山口組系組織の幹部が率直に漏らす。

「これはマズい、となったわけや。警察も国税も『ヤクザのカネには手をつけん』という不文律が崩れた。口座や金庫にあるカネが組織の資金と認定されると、それは即ち組長のカネといわれかねない。さっそく、六代目山口組の執行部は弁護士先生と対応策を協議したようや」

 現段階では福岡県警は組織のカネをすべてトップ(野村総裁)個人のカネと見ているわけではない。

 2013年までの4年間で、工藤會の上納金は年間約2億4000万円、計約10億円に達していた。毎日新聞(6月17日付)によると、工藤會は組員をAランク(ひとり当たり月20万円)、Bランク(15万円)、Cランク(5万円)の3段階に分けて上納金を集めていたという。

 その約10億円のうち、工藤會の金庫番である山中政吉幹部(64・所得税法違反容疑で逮捕)のメモをもとに、野村総裁が自由に使っている「個人のカネ」を特定。それが約2億2700万円で、税務申告していないことから所得隠しと認定し、約8800万円の脱税の疑いがあるとした。

※週刊ポスト2015年7月10日号


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