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限りなく透明な果実、今を不器用にもまっすぐに生きていくーーOTOTOYライヴ・レポート

限りなく透明な果実、今を不器用にもまっすぐに生きていくーーOTOTOYライヴ・レポート

2015年5月22日、高田馬場CLUB PHASEにて開催された、限りなく透明な果実のリリース・ツアー・ファイナルのライヴ・レポートをお送りする。また、7月には東京・大阪の2都市にて企画〈大収穫祭〉が開催される。そちらもあわせてチェックしておこう。

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今年1月にセカンド・ミニ・アルバム『LILI&HAL(リリエンタール)』をリリースした、3ピース・ロック・バンド、限りなく透明な果実。その名に違わぬ透明感溢れる楽曲と歌声はどこかノスタルジックで、彼らの紡ぎ出す不思議な物語に魅了されるリスナーも少なくないだろう。バンド初の全国流通盤となる本作を引っ提げたリリース・ツアー・ファイナルが5月22日、高田馬場CLUB PHASEにて開催された。

実の兄弟であるフクシマサトル(Vo.,Gt)、フクシマアキラ(ba.)、そしてニシカワユウスケ(Dr.)によって構成された、限りなく透明な果実。物語性の強い歌詞は独特な雰囲気を纏い、聴く者をその世界に引き込む。『LILI&HAL』と題された今作は、ドイツの航空工学の先駆者、オットー・リリエンタールの生涯にインスパイアされている。航空工学といえばエンジン搭載の飛行機を発明したライト兄弟が挙げられる。しかし、グライダーでの飛行にこだわり続け、若くして亡くなるその日まで数えきれないほどの飛行実験を行い続けたリリエンタールにスポットをあてたのは、不器用なまでに信念を貫き、その苦難と挑戦の連続ともいえる彼の生涯に、彼らは自らの姿を重ねたのであろう。「リリエンタールの飛行記録」というタイトルも、シンプルながらドラマティックで想像力を掻き立てる趣がある。

2月の東京を皮切りに、地方をまわるごとに着実に動員を増やし、客層を広げていった彼ら。バンド界隈とも広く交流のある彼らがこのツアーの締め括りを共にするのに選んだのが、水槽のクジラ、或るミイ、それでも世界が続くなら、aquarifaの計4組。今注目を集めているバンドばかりの、なんとも豪華なラインナップだ。

水槽のクジラのエモーショナルな演奏で幕が上がった。青白い照明のなか、ゆらゆらと泳ぐように音を奏でていく。幻想的なオープニング・アクトに続くは、或るミイ。がらりと雰囲気を変えるアップテンポなナンバーで会場を沸かせ、観客は思い思いに身体を揺らし、軽快で心地よい音に身をまかせる。

それでも世界が続くなら、の演奏が始まると、会場は再びしんと静まり返った。その言葉のひとつひとつ、一音一音を聴き逃すまいとするかのように、ぴりっとした緊張感がステージを見つめている。決して明るいとはいえない歌詞に、自らの姿を重ねるのだろうか、フロアからは鼻をすする音がかすかに聴こえた。

今回のイヴェントのトリ前をつとめたのはaquarifa。ヴォーカルの岩田真知は「リリース・ツアー・ファイナルという大切な公演に呼んでもらえて本当に嬉しいです。ありがとう」と盟友への感謝を口にすると、ひらひらと舞うように、しなやかで繊細な歌声を披露し、最高のアクトでリリースを祝福をした。

4組の素晴らしいパフォーマンスが終わり、いよいよ、限りなく透明な果実の出番となった。スクリーンにはフクシマサトルによる、まるで映画か舞台のオープニングのようなアートワークが映し出され、高揚感がフロアに満ちた。「リリエンタールの最後の飛行。みなさんのおかげでここまで来れました」と静かにギターを鳴らすと、「君に会いにいく 君に会いにいく 太陽を超えて会いにいく」と早口でつぶやき、丘を駈け思い切り地を蹴り飛び立つかのような勢いで、リード曲「halo:太陽、オレンジ」を演奏。滑空するように爽やかに音を奏で、その透明感溢れる歌声で「三番街、発明家」「カンパネルラ」「灯台守の唄」と流れるように歌い上げていく。気づいた時にはすっかり、彼らの物語の中だ。うつくしく、時に泥臭く、人間味溢れる彼らの音楽には、どこか少年の夢の面影のようなものを感じずにはいられなかった。

本編を「リリエンタール」で締め括ると、フロアからは惜しみない拍手が沸き起こった。それが次第にハンドクラップへと変わり、それに応じた3人が、とっておきのお知らせを連れて再びステージに姿を現した。7月に東京・大阪の2都市にて、〈大収穫祭〉と銘打たれた企画が行われることが発表されると、観客からは大きな拍手と歓声があがった。アンコールに「十字衛生軍」を演奏すると、全力で飛び続けた彼らの飛行記録は、静かに頁を閉じた。

ストーリー性のある歌詞とドラマティックに展開していく音楽、優しげなアルペジオ。そして時折顔をのぞかせる、強い意志のようなもの。それがすべて詰まった最新作、『LILI&HAL』。これは一つの壮大な物語なのではないだろうか。冒険を聴く。冒険を感じる。これはオットー・リリエンタールという一人の人間の史実であると同時に、今を不器用にもまっすぐに生きていく彼ら自身の姿であり、それに共感する私たちの姿でもある。是非一度、彼らの紡ぎ出す物語を体験していただきたい。

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