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執行猶予の取消

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 刑法26条2号は、執行猶予の期間中に、禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないときには、執行猶予を取り消さなければならないとしている。そこで、このような場合、例えば前刑が2年、執行猶予期間中の刑が3年とすると、合計で5年間の服役となる。

 この執行猶予の取消手続きは、刑事訴訟法349条349条の2に規定がある。この手続によれば、弁護士は代理人又は弁護人として、決定手続に参加することができる。しかし、この手続に参加したという弁護士を聞いたことがない。

 そのようなときに、弁護人として手続に参加してもらいたいとの依頼を受けた。初めての事件である。まずは、まるで分からないので勉強をする。また、依頼者からも聞き取りをする。依頼人には申し訳ないが、自分の勉強と経験のために受任したというのが正しい。

 聞き取り結果は、本人が弁護人を依頼するようになった気持ちがよく理解できるものであった。時期的には年末であり、裁判所の開廷日もあとわずかしかない。そして、執行猶予期間が満了となる日は、翌年の1月4日であった。つまり、本人は、弁護人を参加させることで、忙しい弁護士のことであるから、年末に執行猶予取消についての裁判を開くことはできず、その間に執行猶予期間が満了となることを意図していたのだと思う。

 しかし、私は、本当に用があるなら別として、きちんと裁判所と打合せをした結果(裁判所に押し切られてという面もあった)、年内に期日が入ることとなった。確か、12月の押しつまった日であった。この裁判自体は、あっという間に終了した。

 依頼者は、即時抗告をしてくれと悪あがきをする。私は、即時抗告はするが、結果がよくなるとは思えないと伝えた。つまり、執行猶予は取り消されて、前刑と併せての服役となる可能性が100パーセントに近いことを伝えた。もちろん、即時抗告もダメであった。

 年が明けて、その依頼者から接見(というか面会)の依頼があり、行ってみると、喜色満面状態である。どうしてなのかというと、執行猶予の取消の効果は、その旨の決定文が、本人に特別送達されて初めて発生する。

 ところが、1月4日までに特別送達がなされず、そのまま執行猶予期間は満了し、これを取り消すことができなくなったという次第である。結局、本人は執行猶予期間中に言い渡された実刑にだけ服することとなった。これが正義であるかどうかは別として、複雑な気持ちであった。

 さて、どうして、そのようなことになったのかである。本人は東京拘置所にいたのであるが、特別送達は、拘置所のようなところでは、必ずその日に受領することになっている。しかし、年末年始には速達以外は受け付けないとの申渡しが、拘置所から郵便局になされていたらしく、郵便局もそれに従って配達をしなかったらしい。拘置所のうっかりミスがなければ、本人はより長期間の服役となっていた。

 年明けからしばらく経過した後の新聞に、拘置所のミスという記事が大々的に掲載されたのにも驚いた。あ~この事件だと、新聞記事が身近に感じられた次第である。その後拘置所所長は更迭されたとの噂を聞いた。

元記事

執行猶予の取消

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