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高齢者の地方移住促進は愚策の最たるものと大前研一氏が批判

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 日本創成会議が6月4日に発表した東京圏の高齢者の地方移住をすすめる提言が「現代版姥捨て山」だと批判を浴びている。なぜ批判が集まるのか、大前研一氏が解説する。

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「東京圏の高齢者の地方移住を促進すべき」という民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)の提言が波紋を広げている。同会議は昨年、出産年齢の中心である20~39歳の女性が半減することにより、全国の896市区町村が2040年までに、介護保険や医療保険などの社会保障の維持が困難で雇用も確保しづらい「消滅可能性都市」になると指摘して大きな論争を呼んだ。

 今回は東京圏の75歳以上の高齢者が今後10年間で急増し、深刻な医療・介護サービス不足に陥るとして高齢者の地方移住などを提言。具体的な移住先の候補地として医療・介護施設や人材に余裕がある北海道函館市、青森県弘前市、新潟県上越市、愛媛県松山市、山口県下関市、大分県別府市など26道府県の41地域を挙げた。

 それに対して埼玉県の上田清司知事は「試算そのものが荒っぽい推論で、乱暴な議論だ」と批判。地方からも「都市部で高齢者の面倒を見きれないから単純に地方に行けば丸く収まるということではない」(新潟県の泉田裕彦知事)、「東京のお年寄りからすれば、現代版の姥捨て山にならないか。強い違和感を覚える」(愛媛県の中村時広知事)といった疑問の声が相次いだ。

 私も全く別な理由で東京圏の高齢者の地方移住は端から無理であり、日本創成会議の提言は、いま起きている現象を全く無視した「机上の空論」だと思う。

 同会議は昨年の提言でも、日本が直面している深刻な人口減少をストップさせ、地方を元気にしていくためには、地方から大都市へ若者が流出する“人の流れ”を変えて「東京一極集中」に歯止めをかけなければならない、と主張した。しかし私は、その際も「東京一極集中が地方消滅危機を救う」という持論を述べた。

 東京都心の屋根の上(空中)にはまだまだ余裕があるので、容積率緩和を実行して湾岸エリアなどのマンハッタン化を進めれば、いま以上に人、カネ、モノ、情報が集まり「職住接近24時間タウン」が可能になる。それは毎日の通勤ラッシュから人々を解放してビジネスマンの効率アップをもたらし、日本企業や日本の国全体の生産性をも向上させる。
 
 東京一極集中は日本のためには望ましいことであり、もっと都心に集中させれば通勤などの問題も軽減されるので、要は都市計画の問題に帰着するという考えだ。

 ところが、この提言の後、政府は2016年度の地方創生施策に関する基本方針の素案に大都市の高齢者の地方移住促進を柱として盛り込んだ。なんと2016年度から長崎県、新潟県南魚沼市、山梨県都留市、茨城県笠間市で先行してモデル事業を実施して新型交付金を配り、規制を緩和する特区の指定も検討するという。

 モデル事業を実施する自治体に、日本創成会議が移住先の候補地として挙げた41地域が長崎を除いて入っていないのは不可解だが、これはまさに(役人らしい)愚策の最たるものであり、速やかに方向転換すべきである。

※週刊ポスト2015年7月10日号


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