隣町の赤字路線を引き受けた埼玉・川越「イーグルバス」 地域で支える「公共交通」のあるべき姿を訴える

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隣町の赤字路線を引き受けた埼玉・川越「イーグルバス」 地域で支える「公共交通」のあるべき姿を訴える

国内に約4000社ある路線バス会社は、高齢化・人口減少の影響で7割が赤字運営だという。そんな中、大手バス会社が赤字で撤退した路線を引き受け、利用者を大幅に増やしたバス会社がある。埼玉県を中心に運行する「イーグルバス」だ。

2015年6月25日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)では、この会社の取り組みを紹介。改革を進める谷島賢社長(61歳)の黒字化戦略と、公共交通に対する思いを聞いた。
事業好調の中で隣市の路線バスを引き継いだが

蔵造りの町並みで「小江戸」として人気の観光スポット、埼玉・川越。ここに本社を置くイーグルバスは社員193人で車両111台、売上高9億7000万円の中堅バス会社だ。谷島社長は大手旅行会社に2年勤務後、小さな旅行会社を経営する父と観光バス事業に乗り出すべく、1980年にこの会社を設立した。

川越市内を走る「小江戸巡回バス」は、ボンネット屋根のレトロな外観が受けて大ヒット。路線バスでありながら、各観光地をめぐり運転手がガイドまで行う。増加する外国人観光客に対応するため、オリジナルの英会話CDで自主トレまでして顧客満足を追求している。

「街が盛り上がって観光客が増えれば、バスに乗ってもらえる」

と語る谷島社長。川越観光協会の理事もつとめ、観光客が増える街づくりに尽力している。「川越きものの日」や夜の街のライトアップ、毎年秋のプロジェクションマッピングのイベントは大盛況。商店街も客が増え、「バスがお客を連れてくる」と喜んでいた。

9年前、隣接する日高市で大手バス会社が運航していた路線バスが、赤字のため撤退。困った自治体は、イーグルバスへ引き継ぎを打診する。谷島社長は「交通空白地帯をつくってはいけない」と引き受けることにした。
観光バスと異なるモデル「初年度だけで2000万円の赤字」

ところが運行状況を確かめに行くと、客が誰も乗っておらず、考えの甘さを思い知らされる。初年度だけで赤字は2000万円にまで膨れ上がった。

赤字の原因を探るため、赤外線センサーとGPSをバスに取り付け、運行状況と客の乗降数を細かくデータ化。時刻表通りの運航や顧客満足度を追求したきめ細かい改革を行い、利用客は以前の1.7倍となる。

それまで路線バスの経験がなかったイーグルバス。観光バスと路線バスの違いを小池栄子に聞かれると、谷島社長はこう答えた。

「送迎バス・観光バスはお客様との契約で、価格が折り合えば仕事をする。稼働率は70%くらいで、バスも運転手も休ませることができる。ところが路線バスは、365日100%稼働。運転手もバスも余計に雇わなくてはならず、ものすごくコストが掛かる。それでどれだけお客が乗るか分からない。全く違うものだと思った」

同じバス事業といっても公共交通は違う。それを初めて知った時の心境を、谷島社長は「大変な世界に足を踏み入れてしまった」と正直に明かす。これには質問した小池も、思わず「コワイ…」とつぶやいていた。
「交通弱者を救う」ため、国や自治体の支援を

しかし、週に2回しか利用しなくても、通院する高齢者の交通手段を切ってしまうわけにはいかない。谷島社長は、公共交通の本来の使命は「交通弱者を救う」ことだと話し、落ち着いた語り口で自治体や国に求めることを次のように訴えた

「日本のバス事業は、計画・運行・収支のすべてをバス会社が背負ってきた。しかしヨーローッパでは、計画は地域の自治体、運行はバス会社。結果としての赤字はコストとして自治体がみている。バス会社だけでは負いきれない部分は、国や自治体が支援すべき。これが地域で支える本当の公共交通ではないかと考えている」

もともと観光バス会社だったからこそ、顧客満足度の追求や攻めの経営手腕が路線バスでも生かされたのだろう。他の路線でも見習うべき点は多いが、やはりある種の限界もある。高齢化社会だからこそなくしてはいけないという側面があるのだから、企業努力と共に公的支援をという谷島社長の訴えはもっともだと感じた。(ライター:okei)

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