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“住宅版 ゆりかごから墓場まで” 理想郷を目指すまちづくりが進行中

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日本の世帯数の将来推計によると、2010~35年の間に世帯主が65歳以上である高齢者世帯は1620万世帯→2021万世帯に、全世帯に占める割合は31.2%→40.8%に増加する。そのようななか、高齢者の住まいについて、今後の在り方が各地で模索されているところ。
千葉県佐倉市にある「ユーカリが丘」は、山万(開発事業主)が1971年の開発スタート以来、自社で住宅地内に鉄道を導入するなど独自の街づくりを推進し、住宅業界でもその動向は注目されてきた。
現在、約7200世帯18000人が住まうこの住宅地も、高齢化率は約25%と低いながらも増加傾向。年をとっても豊かに暮らすための仕組みづくりに、街全体で取り組んでいる現場を訪ねてみた。開発から44年、街と住民が共に成長し高齢化も進む

京成本線「ユーカリが丘」駅から山万ユーカリが丘線に乗り、住宅地にある「ユーカリが丘・街ギャラリー」に向かった。ここでは、ユーカリが丘の街づくり計画や歴史などが、模型やムービーで見られるようになっている。

【画像1】総開発面積245ha、計画戸数約8400戸の全体模型は壮観。街の真ん中に残された[井野の森]を囲んで新交通システム「山万ユーカリが丘線」が一周する(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】お話を伺った、山万の久須見さんもユーカリが丘在住。当事者意識の高い仕事ぶりがほかにない強みだ(写真撮影:SUUMOジャーナル編集部)

「ユーカリが丘では人口構成バランスが偏らないよう、住宅開発の計画をしています」と、久須見さん。

そんな中、入居開始から35年目となった高齢者世帯が、戸建てから駅前マンションへ住み替えるケースも増えていると言う。
住宅地全体では、流入人口が多く小学生以下の子供が5年間で34%増(2009→2014年)と子育て層からの人気が高い街ではあるが、実は高齢社会への対策も早くから取り組まれている。歩いて暮らせる街を目指した、鉄道+コミュニティバス

ユーカリが丘の“足”として街を一周する、鉄道「山万ユーカリが丘線」。どの住宅からも基本的には駅まで約10分以内で歩ける立地になっているが、高齢になると10分歩くのも辛い。
そこで、各街区を巡るコミュニティバスの社会実験を実施中。将来的には、路線上なら随時家の近くで乗り降りできるようにしたいということだ。これなら、お年寄りだけでなく住民は大助かり!

【画像3】現在運行実験中のコミュニティバス「ここらら1号」、電気バスによるエコ交通網を構築予定。給電スタンドも3カ所設置済み(写真提供:山万)「福祉の街づくり」は高齢者だけでなく多様なメリットを生む

私の知人でも高齢の住み替えによって、元気になる人と引きこもってしまう人がいる。その違いを見て感じることは、年をとっても住み慣れた環境で過ごすほうが、いつまでも生き生きと暮らせるということ。

ここユーカリが丘では、「福祉の街づくり」構想を13年前に発表し、住宅地内の一画約15haのエリアに老人ホームや介護老人福祉施設などを開設してきた。家族で介護が必要になった場合、住宅地内の施設に入所できればお互い安心だ。
その上、ユーカリが丘内に高齢者用施設が増えることで、住民が働く職場も増えるという相乗効果も生んでいるのだ。

【画像4】高齢者向け施設のほか、学童保育所、知的障害者向けの施設なども誘致し、まさに多様な「福祉の街」となっている(画像提供:山万)

私が素敵だと思ったのは、緑が豊かなゾーンにあるので心にゆとりが感じられたのと、合わせてエリア内に「みんなの庭」と名付けられたセラピーケア・ガーデンがあること。
四季の草花の香り・彩りを感じたり野菜を育てることで五感を刺激し、心身の機能回復をサポートする場になっているのだ。動物たちがやってくるアニマルセラピーも実施されている。

【画像5】「みんなの庭」約3000坪もあるケアガーデンは日本最大級、ダイバージョナルセラピーというケアの思想を採用した施設。これも山万グループで運営しているところがスゴい!(写真提供:山万)

一方、子どもたちのための学童保育も充実しているが、住宅地内で一番人気は「福祉の街」内にあるグループホーム(認知症患者用施設)に併設された学童ということ。幼老統合ケアという新しい試みが成功しているようだ。

【画像6】「ユーカリ優都ぴあ(グループホーム)」併設する学童の子どもたちが学校から帰ってきたら、お年寄りに挨拶をするのが日課。皆さん楽しみに待たれている様子(写真提供:山万)

今年3月、駅前にも老人ホーム「ミライアコート宮の杜」をオープン。並行して、在宅医療・介護を医療機関と連携して推進することで、終の棲家もユーカリが丘内で過ごせるよう住環境の整備が進んでいた。子育てからシニアまで、ハッピーサークルでつながる

2005年から「ユ—カリが丘ハッピーサークルシステム」と銘打った、住み替え支援システムが運用されている。これは、子育て世代からシニア世代への家族構成の変化に伴って、住宅地内で住み替えがスムーズにできるようサポートする仕組み。

山万が分譲する住宅に住み替えたい住民の自宅を、査定価格の100%で買い取るサービスとして実施してきた。
30数件の買取物件はリノベーションされ、新築価格より2割ほど安い価格で再販売。若い世帯が街に入ってくる流れになっている。

今年4月からは分譲住宅購入以外に、ユーカリが丘内の高齢者施設等への住み替えの際にも同システムを利用できるよう拡充した。
自宅を買い取るだけでなく、賃貸に出したい方向けに家賃保証のサービスも追加した(一般社団法人移住住み替え支援機構を利用)。高齢者の資金不安を解消する選択肢が増えた。

【画像7】託児所から学童、住民による学習支援などの子育てサービスから、防犯・防災や文化活動、高齢者支援サービスなど、ソフト面の充実がハッピーサークルを支えている(画像提供:山万)

食についても、ユーカリが丘では1998年からクラインガルテン(市民農園)を運営し、ファミリーからシニアまで住民が手づくり野菜を楽しんでいる。

【画像8】現在493区画あるクラインガルテンはフル回転(5000円/年〜)。住民同士のコミュニケーションの場にもなっているとのこと(写真提供:山万)

さらに2013年には、農業生産法人「山万ユーカリファーム」も設立、効率的な近郊農業経営のモデルケースとなるよう活動中なのだ。

ユーカリが丘では今大切にしている活動に、エリアマネジメント「ユーカリが丘のコンシェルジュ」があると言う。
山万の社員が毎日、一軒一軒のお宅を回って相談や困り事が無いか御用聞きをする活動。タウン情報誌も手配りし、住民とのコミュニケーションを高め「誰に言えば良いのか分からない」を、全て聞いてくることから始める。この街は自社で守る、という覚悟が素晴らしい。

【画像9】たった3人で7000世帯以上を担当!一日50〜60軒、年3回ほど訪問できるように頑張るコンシェルジュ(写真提供:山万)

[千年優都]をテーマに、ずっと住み続けられる街を目指すユーカリが丘には、昨今のスマートタウン開発のお手本となっている取り組みがあちこちに見られた。
このように、いち早くさまざまな取り組みが実現している理由は、住宅開発の事業主が山万グループ1社であることが大きいと思う。意思決定の早さや、目標がブレないなど他の企業にはなかなかまねできない強みがあるのだ。

【画像10】ユーカリが丘駅前の北口再開発予定地(手前)には大学誘致などを計画、世代間交流に加え国際交流で次世代の街づくりが進む(写真撮影:編集部)●取材協力
ユーカリが丘
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/06/22/92521/

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