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理想の教師になりたい大学生が世界一周の旅に出た理由(後編)

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Photo credit: Shinya Hiraoka「外国語として学ぶのは日本語!?オーストラリアの学校見学

世界が注目する学校グリーンスクールに暮らす、TRiPORTライターの岡昌之です。
前回に引き続き、理想の教師になるために世界一周の旅を続ける大学生“ひらしん”に、オーストラリアでの先生体験とバリ島のグリーンスクールで感じたことを熱く語ってもらいました。

ゴールドコーストで先生になった“ひらしん”

フィンランドを後にした“ひらしん”は南北アメリカを縦断し、オーストラリアへと渡ります。たどり着いた先はゴールドコースト。またもや幸運にも日本語と数学の補助教員として、地元の学校へもぐりこむことに成功しました。

なぜオーストラリアを選んだの?

当初はカナダでワーキングホリデーをしようと考えていたのですが、定員いっぱいでビザが取れなかったんです。軍資金も心配になってきたので「オーストラリアのバナナ農園で働こう」と思い、オーストラリアへ渡りました。そしてたまたま見学に訪れた学校で「日本語教師のボランティアやってみる?」と突然誘われ、「はい!」と即答してしまいました。
でもここだけの話、この旅に出るまで日本語というものを真剣に考えたことがなかったんです。まさかそれが自分の中で新しい発見だらけになるとは思いもしませんでした(笑)。

それはどんな発見?

正直これまで「日本語を学ぶ・教える」ということの意味というか、価値を理解していませんでした。日本の大学に通っていたとき、それらを学ぶ学生に対して「なんで日本人なのに日本語勉強してんの?」と冷ややかに思っていたほどです。でも、世界に出てはじめてその重要性がわかりました。
オーストラリアの学校では、外国語の科目として日本語を選択する生徒がたくさんいます。進学や就職で有利になるわけでもないのにですよ。とにかく、もうみんな日本語が大好きなんです。というか、日本のアニメが(笑)。
「わからないことは何でも質問する」というお国柄もあるのでしょうが、生徒たちは驚くほど質問してきます。日本人なら意識せずに使っている「てにをは」などの助詞や助動詞・活用語尾など、むしろこちらがハッとするような鋭い質問も投げかけてくるんですよ。
日本語というものに真正面から向き合うことができたのは貴重な体験でした。日本にいたら疑問にすら思わなかったことまで、徹底的に調べたり、考えたりすることができました。ちょうど秋休みに入るタイミングだったので、その期間に僕なりの日本語考察をブログにまとめたところ、これが意外とアクセスが増え、こちらも貴重な収入源となりました。
そのなかでも一番の収穫は、台湾生まれでオーストラリアの大学で日本語を学ぶ綾瀬はるかさん似の教育実習生に関西弁を教えるという栄誉にあずかったことです(笑)。モチベーションを高く持ち続けることがいかに重要かを身をもって学びました。

Photo credit: ひらしんブログ「世界中の学校で先生になる旅

オーストラリアの学校で印象に残ったことは?

アートの時間です! オーストラリアは街全体がアートみたいで本当におしゃれで驚いたんですけど、高校でもそのレベルの高さには度肝を抜かれました。日本でも有名なアパレルブランドとのタイアップ授業が行われており、生徒たちは各自でフォトショップやイラストレーターを駆使して、本物顔負けのブランドパンフレットを製作するんです。デザイン専攻でもない普通科の生徒たちがですよ?
そしてパンフレット製作だけでなく、その過程での考察や、プロが作ったパンフレットを分析した30ページにも及ぶレポートも提出させます。日本の学校ならここで終わりでしょう。しかし、オーストラリアの高校は違いました。提出されたレポートを先生が授業中に生徒の目の前でチェックし始め、ある生徒に向かってこう言ったんです。
「やり直し。このレポートには意味がない」
そしてその生徒の意見も聞きながら「これはデザインではない」「広告に必要な要素が欠けている」と10分にわたり説明し、最後にこう告げました。
「来週までに再提出。それができなければ単位はなし」
日本の大学以上の厳しさを目の当たりにし、僕は言葉を失いました。そしてこれが当たり前のような雰囲気を漂わせる生徒たちの様子も信じられませんでした。そんな光景を見て呆然としている僕を尻目に、その先生は「クリエイティブであれ。あなたの価値を生め」と言い放ったのです。

ジョブス(笑) こんな学校だったらずっといたいね。というか、生徒になりたい(笑)。

はい、僕もそう思いました。オーストラリアへはまたいつか戻りたいと思います。でも、どうしても次に行きたい場所があったので…。

ひらしん、グリーンスクールへ

インドネシアのバリ島にあるグリーンスクールは、世界が注目する「世界最先端の学校」。サステナビリティを追及した驚異的な建築だけでなく、その教育哲学も先進的で未来志向な学校です。“ひらしん”はオートバイに乗って、道に迷いながらもジャングルの中にあるこの学校へやって来ました。

Photo credit: Masayuki Oka「SUSTAINABLE SOLUTIONS 2015@グリーンスクール

なぜここへ来ようと思ったの?

「不確実な未来を生きる子供たちに、必要とされるであろう全ての能力を伸ばす教育をつくりたい」
学校創設者ジョン・ハーディーのこの言葉にシビレたんです。僕が漠然と「こんな教育があったらいい」と考えていたことがここにはあるんじゃないかと思いました。そして、本当にありました(笑)。
同じような理念を掲げる学校は世界中にあります。でもここはその理念を実現するためだけに学校がゼロから設計されています。学校という器を作って理念を基に教育するのではなく、学校全体が理念の具象化というか…。まるで既存の「学校」というものを見たこともない人たちが作ったかのようです。

確かにありえない学校だよね。あとはどんな印象が?

ここの生徒たちの行動力や瞬発力に驚きました。今まで様々な学校を見てきましたが、小学生が中高生や先生・保護者など大人たちの面前でプレゼンする学校なんて初めて見ました。10歳の女の子がNPOを立ち上げて、しかも政府へ関連法整備を直談判するなんて信じられません。
才能をもった生徒にスポンサーが付いていたり、実際にビジネスをしている子までいたり、何から何まで驚きです。ちょうど僕が来ている時に、通学時の交通量と排ガスを減らすために廃油を再利用したバイオ・スクールバスのサービスがスタートしていましたが、普通なら学校が提供するようなサービスまで、生徒たちが作り上げて運営しているなんて想像以上でした。

この学校は“いい意味”で何もやってくれないから(笑) 全部自分たちで作らなければいけないんだよね。だから支援を求めるために世界中へ「想い」を拡散させ、人とお金をどんどん呼び込んでいます。

10代前半の生徒たちが世界のTEDイベントや国際会議などへ出向いてプレゼンすることにも驚きました。スポンサーの力を借りて、自分たちの活動のために世界を飛び回るなんてもう異次元の世界です。強い「想い」だけじゃなく、それを速やかに実行に移せる力が当たり前のように備わっていて、しかもそれが全然特別なことだと思われていないことが衝撃でした。
自分の研究や活動のために、世界的権威や有力者、国際機関や大企業に気軽にコンタクトをとったり支援を求めるんですからね。生徒の顔つきも自信に満ちていて、雰囲気も大人びています。誰一人も周りの顔色なんてうかがっていませんし、誰一人も「正解」なんて求めない。本当に学ぶことの多い学校です。

さいごに

一週間の滞在の後“ひらしん”はシンガポールへ渡り、マレー半島を北上しカンボジアをめざしました。その後はインドへ向かうという「教育をめぐる冒険の旅」。今度はどんな教育に出会うのでしょうか。そして、帰国後に彼はどんな先生になるのでしょうか。今から楽しみです。

[平岡慎也 通称ひらしん
1993年生6月15日京都市伏見区生まれ、立命館大学情報理工学部3回生(休学中)。高校卒業時に「愛し合おう、旅に出よう」(高橋歩:著)を読み感銘を受ける。
2014年wizTABIPPO「世界一周コンテスト」に出場し、450人のエントリーの中から準優勝。同年10月より「世界中の学校で先生になる旅」というテーマで、世界一周をスタート。趣味、オカリナ。
『世界中の学校で先生になる旅』ひらしんブログはこちら]

理想の教師になりたい大学生が世界一周の旅に出た理由(前編)

(ライター:岡昌之)
Photo by: Shinya Hiraoka「外国語として学ぶのは日本語!?オーストラリアの学校見学

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*Shinya Hiraoka「外国語として学ぶのは日本語!?オーストラリアの学校見学
* Masayuki Oka「SUSTAINABLE SOLUTIONS 2015@グリーンスクール

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