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防災集団移転という挑戦[3] 海のそばで暮らし続ける、ということ

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「防災集団移転」は住民主導の集落再建・まちづくりの取り組みだ。その道のりは決して平坦なものではない。それでも先祖代々の土地にこだわり、ここに残ることを選んだ人たちの想いとは。前の記事を読む
震災から4年、住民による集落再建「防災集団移転」という挑戦(1)
震災から4年、住民による集落再建「防災集団移転」という挑戦(2)海のそばで暮らし続ける、ということ

気仙沼は津波の直後、沿岸部の貯蔵タンクなどから流れ出した灯油・ガソリン等による大規模な火災に見舞われた。防集に参加せず、別の地域に引越すなどした人たちも少なくない。

熊谷さん:何日も山火事と格闘しながら、生きた心地がしませんでした。そんな経験をしたから、「もう戻れない」という人たちがいたのも当然です。引き止めることはできません。出て行く人たちは快く送り出す。来る人たちは快く受け入れようというスタンスでした。

小野寺さん:でも先祖代々のお墓がここにある人は、ほとんど防集に参加している。(海の仕事といった)職業だけでなく、お墓や土地や田んぼなど、ここを離れられない理由があった。

だが気仙沼の人たちがこの土地で集落再建を目指す理由には、もう一つ「海のそばで暮らしてきた」ということがある。

尾形さん:朝起きて玄関の戸を開けたときに、海が見えないと心が落ち着かない。ダメなのよ、これだけは。この感覚だけは言葉にできない。ここから離れることができない。

小野寺さん:それが一番の大きな理由。あんな怖い目に遭って、家族や親戚をなくしていながら、なぜまた海にしばられるような同じ生活をするのか、と不思議に思われるかもしれない。
でも潮の匂い、季節の変化、目で見えるだけでなく感じ取るものが、「ここに残る」という選択をさせる。選択肢がないのではなく、選択しようもない。それは自分たちの血の中に流れているもの。理由のないものだと思う。

熊谷さん:自分は陸(オカ:内陸のこと)から海の近くに来た人間だから、両方分かる。(内陸に戻って)来ていいぞと言われるけど、戻る気はない。それだけ海の近くというのは魅力がある。

暮らしてきた土地とのつながりと、地域の絆。それは「ご近所付き合い」や「コミュニティ」といわれるものとは、また別のものだといいます。

小野寺さん:都会でいうような近所づきあいではなく、海を介してみんながつながっている。一緒に養殖をする、一緒に釣りをする。単なる児童会とかPTAとかそういうつながりじゃない。

尾形さん:都会でお隣さんといったら、親切な人もいるし、そうじゃない人もいるでしょ。でも浜では、たとえ隣同士いがみ合っていても、海の上では助け合う。防集だろうが、普段の暮らしだろうが、自分ひとりでは何もできない。人と人とのつながりがあって、初めて成り立つことなんです。

【画像1】造成中の土地を見学する住民たち、アドバイザー、JVCスタッフ(写真撮影:hato)

現在、造成地の完成した小々汐・梶ヶ浦ではすでに住宅建設が始まっているが、大浦では今まさに造成工事の真っ最中だ。完成を待たず、仮設住宅暮らしの中で亡くなった方もいた。造成完了時、小々汐・梶ヶ浦の2地区は「まだ大浦が終わっていないのだから」とお祝いを延期しようとした。だが逆に大浦地区の人たちが音頭を取って、造成完了祝いを兼ねた忘年会を開いた。

3地区すべての住宅地が完成する2015年秋。ゴールではなく集落再建のスタート地点に向けて、気仙沼の人たちは一歩、また一歩と確かな歩みを進めている。

【画像2】2014年暮れに行われた3地区合同の忘年会(写真撮影:hato)

もしも自分が住んでいる地域で同様の災害が起きた場合、このように支え合い、励まし合う共同体(コミュニティ)の再建が果たして可能だろうか?そもそも再建すべき共同体や地縁の失われている地域も少なくない。
「防災」や「まちづくり」はハードで解決できることばかりではなく、ソフト的な方策が非常に重要だ。それは一朝一夕に備えられるようなものではない。

日ごろから、自分の暮らす土地、そして地域の人々とどう関わっていくのか。都市部で暮らしている人たちにとっても、気仙沼の人たちの取り組みから学ぶべきことは多いはずだ。●取材協力
・日本国際ボラティアセンター/気仙沼支援活動レポート●シリーズ第1回「防災集団移転という挑戦[1] 震災から4年、住民の手による集落再建
●シリーズ第2回「防災集団移転という挑戦[2] 新旧の住民が共に目指す集落の再建
●シリーズ第3回「防災集団移転という挑戦[3] 海のそばで暮らし続ける、ということ
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/06/18/92402/

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