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患者の負担は軽減される?病院の敷地に薬局併設容認の動き

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厚生労働省は病院の敷地内に薬局を併設することを認める方針に

産経新聞の記事によると、厚生労働省は政府の規制改革会議の議論をふまえ、病院の敷地内に薬局を併設することを認める方針を固めたとのことです。

現在は医薬分業の規制により、病院の敷地外の隣接した場所に薬局が設置される「門前薬局」が一般的になっていますが、今回の方針転換で何が変わるのか、これまでどのような規制がなされていたのか。敷地内薬局の問題を解説したいと思います。

薬剤師法19条は、「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」として、薬の処方箋は医者が交付するが調剤は薬剤師が行うという、いわゆる「医薬分業」を定めています(ただし、患者が希望すれば院内処方できるなど広く例外も認められています)。

病院の医療費を削減したい国の思惑で院外処方を推進?

「医薬分業」の本来的な趣旨は、身体に危険のある薬の処方について専門家の分業を行うことで患者の安全を確保することなどですが、政治的には、病院内で薬を処方する「院内処方」だと、薬価で儲けようと病院が過剰投薬を行うことで医療費が増大することから、国としては「院外処方」を推進して医療費を削減したいという思惑もあります。

このため、国は院外処方推進のため、院外処方の調剤報酬を高く設定したり、病院が院内処方をしても儲からないような方向での薬価の改定を行ってきました。その結果、時代とともに院外処方の割合は増加し、現在では病院のまわりに薬局が林立する光景が見られるようになりました。

また国は、病院と保険薬局が実質的に一体の存在になることで医薬分業が骨抜きにならないように、薬局の建物や場所も病院からしっかりと切り離す規制を併せて行っています。具体的には、「保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則」という省令により、保険薬局が病院と一体的な構造になったり、一体的な経営を行うことを禁じているのです。さらに、この省令を徹底するために、病院と薬局の間には道路をはさむことや境界にはフェンスを設置することなど、細かい規制をかけています。

今回の規制緩和では薬局経営の独立性が担保されることが条件

今回の厚労省の規制緩和は、薬局経営の病院からの独立性が担保されることを条件として、病院の敷地内に薬局を設置することを認めようとするものです。国の思惑のために、患者の利便性を犠牲にしてきた一連の規制の一部が緩和されることを意味しますが、最近では、土地を分筆するなどの方法により、門内薬局を設置する動きもあるので、規制自体の実効性がすでに失われつつあるという背景もあるのかもしれません。

国としては、「かかりつけ薬局」推進の旗印のもと院外処方を推進していますが、複雑な薬価体系により、患者にとってはかえって院外処方の方が費用が高くついたり、利便性が悪くなるなどの問題もあります。国は、院内処方、院外処方のメリット、デメリットを正確にわかりやすく国民に伝える努力が必要でしょう。

(永野 海/弁護士)

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