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日本創生会議「東京圏高齢化危機回避戦略」の読み解き方は?

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日本創生会議が、2014年に全国の市区町村の約半分に当たる896自治体を「消滅可能性都市」と指摘する提言を発表して話題を集めたが、これに続き「東京圏高齢化危機回避戦略」を発表した。今後10年間で東京圏の後期高齢者が急増し、医療・介護分野がパンクするという指摘だ。その危機回避戦略が、波紋を呼んでいる。【今週の住活トピック】
「東京圏高齢化危機回避戦略」を公表/日本創生会議一都三県の東京圏で、今後急速に高齢化問題が深刻化する

日本創生会議は、低出生率と人口の東京一極集中による「地方消失」に警鐘を鳴らす一方で、勝ち組に見える東京圏では、急速な高齢化で医療・介護や住まいの問題が深刻化することに着目。それに対する処方箋として、今回の「東京圏高齢化危機回避戦略」を提言している。

東京都ではなく、東京圏(一都三県)としている点もポイントだ。
団塊世代が後期高齢者へ移行する問題は、以前から知られていたことだが、今後は東京都より、むしろ千葉、埼玉、神奈川県のほうが、高齢化率が高くなるという。その理由は2点あり、1点目はドーナツ圏といわれる周辺地域の大規模団地で高齢化が進むこと。もう1点は、千葉、埼玉、神奈川県で若者が東京都に流出する反面、東京都区部から中高年層が流入していること。

つまり、一都三県で高齢化問題に対応しないと、適切な解決策にならないという指摘だ。都県ごとでは解決が難しい医療・介護体制の課題

東京圏では2025年までに後期高齢者が増加するのに伴い、介護需要が増加する。2015年に比べて東京都が38%増であるのに対し、千葉、埼玉、神奈川県で50%前後も伸びる。2025年以降も介護需要は東京圏で増加を続ける。

医療・介護サービスについては、急性期医療(一般病床)で高機能病院が多い東京都区部に周辺地域が依存しており、逆に慢性期医療(療養病床)や介護では、都区部が周辺地域に依存するといった、相互依存の関係がある。

したがって、東京圏全体で医療・介護体制の増強をしていく必要があるのだが、新たな介護施設を整備するには用地取得や整備費用、人材確保などの諸問題が立ちはだかる。

以上が日本創生会議の指摘の概要だ。

【画像】東京圏の後期高齢者収容能力(出典:日本創生会議「東京圏高齢化危機回避戦略 図表集」より転載)41圏域を例示した、東京圏の高齢者の地方移住提言に大きな波紋

日本創生会議はこれらの課題に対して、いくつかの危機回避戦略を挙げている。
人材については、ICT(情報通信技術)やロボット等の活用、資格の融合化、外国人人材の受け入れなどの構造改革を提言。ほかに、地域医療介護体制の整備と高齢者の集住化を一体的に促進すること、一都三県と5指定都市が連携して取り組んでいくことを要望し、最後に東京圏の高齢者の地方移住を促すべきとまとめた。

この地方移住についての提言に関心が集まっている。
移住を促された東京圏の都や神奈川県では知事の反発も見られ、医療・介護体制が整っているとして例示された41圏域でも歓迎と戸惑いが交錯している。さらに、医療・介護体制に力を入れているものの例示に挙がらなかった自治体の困惑もあって、大きな波紋を呼んでいる。

■医療・介護ともに受け入れ能力のある地方
 【北海道】室蘭市、函館市、旭川市、帯広市、釧路市、(北見市)
 【東北】青森市、弘前市、秋田市、山形市、(盛岡市)
 【中部】上越市、富山市、高岡市、福井市、(金沢市)
 【近畿】福知山市、和歌山市
 【中国】岡山市、鳥取市、米子市、松江市、宇部市、(山口市、下関市)
 【四国】高松市、坂出市、三豊市、徳島市、新居浜市、松山市、高知市
 【九州・沖縄】北九州市、大牟田市、鳥栖市、別府市、八代市、宮古島市、(熊本市、長崎市、鹿児島市)
※( )内は準地域地方定住は東京圏の高齢化問題の解決策になるか

高齢者を地方で受け入れれば、地元の雇用が創出されるなどのメリットがある反面、移住高齢者の医療・介護サービスの負担による自治体の財源の課題も残る。また、元気なうちに移住してもらえれば新たな人材にもなるが、高齢者よりも若者の移住に期待する声もあり、単に地方移住を促進するだけでは解決策にはならない。

また、住まい手の立場で考えてみると、住み慣れた場所に住み続けたいという考え方や子どもたちの近くに住み替えたいという考え方、自然豊かな地方で第2の人生を送りたいという考え方など、人それぞれで住む場所の意向は違う。

とはいえ、東京在住の50・60代の地方移住へのニーズは意外に高い。内閣官房「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」(2014年8月)によると、2~3人に1人は地方移住を検討したいと思っているという。だからといって、例示された地方の移住に飛びつくべきではないだろう。地方で何をしたいのか、どんな暮らし方をしたいのかを家族で話し合い、十分な情報収集やお試し移住体験などを重ねて、じっくり判断するのがよい。

日本創生会議の提言は、単なる将来予測や処方箋の提示ではなく、リスクの指摘と解決策のヒントと見るのがよいだろう。消滅可能性都市として指摘された豊島区などが、その後いろいろな対策を打ち出しているという結果もある。それぞれの自治体が実態に応じて適切な対策を検討することに加え、住まい手自身も計画的にライフプランを考えることが大切だ。

もちろん、地方移住は提言のひとつでしかない。急速な高齢化と医療・介護の問題解決には、地方定住ばかりに政策が集中するのではなく、病気や介護を予防する健康維持促進、効率的な医療・介護体制の強化、一都三県など広域での医療・介護と住まいの政策連携など、あらゆる方面で知恵を絞っていく必要がある。
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/06/17/92122/

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