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犯罪歴を会社に密告した人を名誉毀損罪で訴えられる?

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Q.

 私は以前、出資法違反で逮捕され、その違反については罰金刑と執行猶予判決となり、執行猶予期間も経過しました。しかし、現在、勤務していた会社宛に、ネットに掲載されていた事件の記事を匿名で密告され、それを理由に退職することになりました。密告したものは、恐らく社内の人間ですが、明確に誰がやったのかはわかりません。そこで、警察に告訴し、名誉毀損罪で事実関係を明らかにしたいのですが、可能でしょうか?

(40代:男性)

A.

 今回のご相談では、犯罪歴を社内に公表した人物を名誉毀損罪で告訴したいとのことですね。
 まず、名誉毀損罪の成立には、「公然と事実を摘示して人の名誉を毀損」することが求められます(刑法230条)。まず、過去の犯罪歴を摘示することは、「事実の摘示」に当たります。そして、それによって当然社会的な評価は低下しますので、「名誉を毀損」したとも言えます。

 残すは、公然性の要件ですが、これは「不特定または多数の者が認識し得る状態」を意味します。
 ある特定の人物が、例えば人事部門や総務部門などを経由して社内に広まるであろうことを予期しつつ、特定かつ少数人(人事担当者)に事実を示した場合も「不特定または多数の者が『認識し得る』」状態といえるため公然性の要件を満たすものと考えられます(伝播性の理論。参照判例として:大判昭3年12月13日、最判昭34年5月7日など)。したがって、一見、名誉毀損罪が成立するようにも思えます。

 しかし、名誉毀損行為に該当するからといって一律に罰してしまうと言論の弾圧につながってしまうため、例外的に次の3要件を満たした場合、名誉毀損罪は成立しないと規定されています(刑法230条の2第1項)。

(1)公共の利益を図る目的があったこと
(2)公共の利害に関する事実であること
(3)事実が真実であるか、または、真実だと信じるに相当の理由があること
 今回のケースでは、社内に公表することが、「公共の利害に関する」ことと言えて、「公共の利益を図る目的がある」と言えるかどうかです。
 たとえば、議員として立候補する人の犯罪歴を公表した場合は、公共の利害に関すると言えそうですが、一個人となると話は別です。しかしながら、過去の犯罪の重大性、刑の執行を受けてからどの程度の時間が経過しているか、罪質としての軽重などによって「公共性が高い」と判断されることもありえます。
 したがって、形式的には名誉毀損罪の行為要件は満たすものの、相手を罪に問えるかは、正直に申し上げて実際の裁判に発展しないと公共性の判断が難しいものと考えられます。また、密告した人物が特定されていないところもやっかいではあります。実際上、匿名による密告のような状況において、捜査機関である警察がどの程度真摯に対応してくれるかは正直に言って微妙な部分があると考えられます。

 こうした部分を踏まえて、ひとまず、刑事事件に明るい弁護士などの専門家に告訴以外の今後の対応も含めてご相談されることをおすすめいたします。

元記事

犯罪歴を会社に密告した人を名誉毀損罪で訴えられる?

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